DrunkBusterプロジェクト

DrunkBuster(仮称)というシステムで飲酒運転撲滅をめざします。お知恵をお貸しください。

リモートセンシングのために

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速度違反取締り用レーダーのように離れたところから対象物を測定することをリモートセンシング(Remote Sensing)といいます。

測定する対象が速度だけならそれほど難しくないのですが、アルコール成分の検知となると話は別です。

アルコール成分の検出と、その情報の伝送という二つの要件を満たす電(磁)波とはどのようなものでしょうか?

私は、テラヘルツ波が向いているのではないかと思います。

上の表はマイクロ波テラヘルツ波、赤外線のそれぞれについて、検出に関わる分光特性と、情報の伝送に関わる伝搬特性を大雑把に比較したものです。

前回、分子の状態からスペクトラムという情報を得ることでその物質を特定する“分光”について書きました。

そして、電子、振動、回転の3様態のうち振動スペクトラムは“指紋領域”と呼ばれるほど分子の構造を鋭敏に反映すると云われます。それだけなら振動スペクトラムを検出できる赤外線がよいのですが、伝搬特性の面で今ひとつです(太陽光ノイズ、障害物に弱いなど)。

一方、伝搬特性の面ではレーダーのように反射波が利用できるなどマイクロ波がよいのですが、分光で得られる回転スペクトラムがアルコール成分の検知にどこまで有効なのかよく分かりません。

ということで、赤外線とマイクロ波の中間にあり両者の性質を併せ持つと云われるテラヘルツ波がふさわしいという(安易な)結論です。

ただし、テラヘルツ波の場合は(マイクロ波のように)反射波ではなく透過波を使うことになるので、送信機(アンテナ)と受信機(アンテナ)は物標(車両)を挟むように配置する必要があります。また赤外線の場合は、スペクトラム情報をレーザーのようなより高い周波数の電磁波に乗せて(変調して)伝送する必要がありそうです。

 

どうやってアルコール成分を検出するか

あらゆる物質はそれぞれ特有の周波数スペクトラムを持つので、これを観測して物質を特定することになりますが、それには「分光」という技術を使います。

たとえば分子の内部のどの状態を観測するのかによって、

・電子励起状態を観測する可視・紫外光分光法、

・振動励起状態を観測する赤外光分光法(FT-IRなど)

・回転励起状態を観測するマイクロ波分光法

振動励起や回転励起の状態を観測するテラヘルツ波分光法(THz-TDSなど)
の4つくらいに分類されるようです。
(紫外線より波長の短いガンマ線分光やX線分光は省略しました)
 
 
 
 

テラヘルツ波が有望

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※ テラヘルツ波

使用電波はテラヘルツ波またはマイクロ波がふさわしいと考えます。

テラヘルツ波は上図のとおり、赤外線とマイクロ波との間にあり、光と電波の性質をあわせ持つ電磁波です。

赤外線は分光性能に優れますが、太陽光などからのノイズに弱く伝搬距離も短いのが難点です。

システムの概要

手書きの概念図をご覧ください。

1) 道路の片側に送信機を、その反対側に受信機を設置し、その間を自動車が通過します。

2) 送信機からパルス状の電波(テラヘルツ波※)を自動車に向けて放射します。

3) 電波が車内のアルコール成分を含んだ空気を通過する際、アルコール特有の吸収を受けて周波数スペクトラムが変化します。

4) 受信機で受信した電波の周波数スペクトラムがアルコール成分と一致すれば、要チェック車両として停車させドライバーの呼気検査を行います。